化粧品成分辞典

合成ポリマーが危険の嘘・本当|ポリマーの種類・配合目的・濃度

合成ポリマーは「皮膚呼吸を妨げる・毛穴を詰まらせる・皮脂を過剰に分泌させる・常在菌が住み難くなる」など都市伝説のような情報がありますが、本当なのか気になりますよね?

前半はポリマー(高分子)の種類や配合目的、後半はデタラメ情報を一問一答形式で解説します。

ポリマーとは?ポリマーの種類

ポリマーとは?

ポリマー(polymer)とは、日本語では高分子と訳されます。

保湿成分として有名なヒアルロン酸も天然系の高分子ポリマーですが、ヒアルロン酸1分子では高分子と呼びません。

ヒアルロン酸1分子

 

ヒアルロン酸1分子が、10万個・100万個・200万個と繋がることで高分子ヒアルロン酸となります。(どれくらい繋がっているかを重合度と言います)

分子量10万個のヒアルロン酸と分子量100万個のヒアルロン酸では使用感が違いますし、使用量が1%なのか?0.01%なのか?でも変わります。

配合目的 配合濃度 化粧品の種類
保湿・ゲル化(分子量が大きければ皮膜を形成するかも) 1% ヒアルロン酸原液
保湿(皮膜形成しない) 0.01% 化粧水

ポリマーといっても重合度や使用量によって性質や使用感、配合目的が異なるので、一概にポリマーが危険という説明は間違っています。

ポリマーの種類

ポリマーは、その由来や起源から大きく3つに分類されます。

  1. 動植物などから得られる天然ポリマー
  2. 天然ポリマーから化学的に誘導された半合成ポリマー
  3. 人工的に合成された合成ポリマー
化粧品に使われる主なポリマー(高分子)
天然系
  1. ヒアルロン酸
  2. 多糖類(デンプン)
  3. ゼラチン
  4. キサンタンガム
  5. アラビアゴム
  6. ベントナイト(粘土鉱物)
半合成
  1. アルギン酸ナトリウム(海藻)
  2. カルボキシメチルセルロース
  3. レーヨン(再生セルロース)
合成
  1. カルボマー
  2. ポリエチレングリコール
  3. メチルポリシロキサン
  4. ポリビニルアルコール
  5. アクリル酸アルキルコポリマー
  6. (トシルアミド/エポキシ)樹脂
  7. ナイロン

ポリマーの配合目的(効果)

先ほど説明した通り、分子量(重合度)・配合濃度・水溶性なのか撥水性なのか?によっても異なりますが、化粧品に使われるポリマーの配合目的は6つあります。

  1. 増粘・ゲル化・乳化安定・分散
  2. 保湿
  3. 乳化
  4. 皮膜形成
  5. 粉体原料のコーティング
  6. 繊維

増粘(使用感・乳化安定)・ゲル化

ポリマーの使用目的で多いのが、増粘やゲル化目的です。

増粘とは、粘度を増す=とろみをつけることです。また、ポリマーの量が多ければゲル化します。

お料理でいうと「水溶き片栗粉」や「ゼラチン」を低濃度で使えばトロミ、高濃度で使えばゼリー状になるのと同じですね。

化粧品では、使用感を良くしたり、乳化を安定させさせる目的で使われます。

【主なポリマー】ヒアルロン酸(天然)、キサンタンガム(天然)、カルボマー(合成)、アクリル酸アルキルコポリマー(合成)、ポリエチレングリコール(合成)など

天然ポリマーだけでトロミをつけたり、ジェルを作れないの?
作れるんだけど、使用感が悪かったり、気温で粘度が変わる菌やカビが発生しやすい(強い防腐力が必要)っていう理由で、合成や半合成ポリマーを併用するのよ。

例)
ヒアルロン酸でゲル化するとツッパる
キサンタンガムや多糖類でゲル化するとベタつく

増粘すると乳化が安定する理由

乳化とは、界面活性剤を使って水と油が均一に混ざったクリーム状のものですが、時間の経過と共に、油は上、水は下に分離してしまいます。

このとき、クリームにトロミがあると油が上に行く力を抑えられるので分離しにくくなります。

保湿

高分子ポリマーの中でも水溶性高分子は、水分を抱え込む力があり、肌表面にとどまり保湿効果があります。

【主なポリマー】ヒアルロン酸(天然)、多糖類(天然)、ポリエチレングリコール(合成)など

皮膜形成

主に合成ポリマーが使われます。

分子量が大きく皮膜強度の強いポリマーはヘアジェル、水溶性合成ポリマーはフェイスパックやピーリングジェル耐水性の日焼け止めにはシリコン系ポリマー、耐水性のアイメイクにはアクリル系ポリマー、ネイル製品にはエポキシ樹脂やニトロセルロースなどが使われます。

  1. ヘアスプレー・ヘアジェル
  2. フェイスパック(洗い流しタイプ・剥がすタイプ)
  3. 擦り取るタイプのピーリングジェル
  4. 耐水性の日焼け止め・メイク化粧品
  5. 涙で落ちないアイライナー・マスカラ
  6. マニキュア・トップコート

※とろみをつける程度の配合量では皮膜になることはありませんし、汗や洗顔で簡単に落ちるので毛穴を詰まらせることもありません。

粉体原料のコーティング

撥水性や金属アレルギーを防ぐ目的で、ファンデーションや日焼け止めに使われる「酸化チタン」などの粉体原料のコーティング剤としても使われます。

繊維

爪を補修する目的でネイルのベースコートに配合されます。また、睫(マツゲ)のボリュームアップを目的にマスカラなどにも使われます。

【主なポリマー】レーヨン(半合成)、ナイロン(合成)など

ポリマーは危険の嘘・本当(一問一答)

シリコンポリマーは、強力なクレンジング剤が必要で肌を痛める

本当

合成ポリマーが肌をラップのように覆って皮膚呼吸を妨げる

3つの嘘が含まれます。

1.皮膚は呼吸しません。皮膚は真皮にある血管から表皮基底膜を通じて酸素を得ています。お風呂につかっても窒息しないことからも明らかです。

2.固まるフェイスパックのように、高濃度でポリマーを配合しない限り皮膜形成しませんし、顔を覆うような皮膜強度もありません

とろみには0.01~0.05%、剥がすパックは数%のポリマーを使いますので、単純に約100倍の量が必要です(ポリマーの種類によって異なります)

3.マニキュアなどに使われる耐水性のアクリル樹脂系ポリマーが、顔用製品に使われることは稀です(使われるとしても皮膜形成が目的ではありません)

合成ポリマーは毛穴を詰まらせる

半分は本当、半分は嘘

合成ポリマーは皮脂分泌を増やす

合成ポリマーは皮脂分泌を減らし肌を乾燥させる

皮膚常在菌で分解できない

主な皮膚常在菌は「ブドウ球菌、アクネ菌、黄色ブドウ球菌」の3つですが、これらの菌の栄養は主に皮脂です。

常在菌は、合成ポリマ-だけでなく天然ポリマーも分解しません

ポリマーは肌の新陳代謝や洗顔で落ち、肌に残り続けることはありません。

常在菌が住みにくくなる

天然、合成に限らず、ポリマーに殺菌作用はないので、菌が住みにくくなるとはありません。